「平成29年度西北管内環境公共合同先進地研修」

平成29年10月31日に行われた「西北管内環境公共合同先進地研修」を紹介します。
この研修は、環境への配慮や生態系の保護など先進的な取組をしている「大畑川地区」を視察し、今後の活動の参考にするために西北管内の環境公共推進協議会、水土里ネット青森が合同で開催しました。

むつ市北西部を流れる大畑川は、多種多様な魚類が豊富に生息する自然豊かな川で、地域住民の憩いの場となっています。一方、河川中流にある大畑頭首工は施設の老朽化や土砂の堆積により魚道機能が低下していることから、21年度に農業者、林業者、漁業者ほか行政機関等からなる大畑川地区環境公共推進協議会が設立され、平成22年度から大畑魚道の改修に取り組むことになりました。

大畑川の上下流では、これまでに林業者と漁業者の協働による水源林の保全活動や、地域資源のホタテ貝殻を利用した魚礁の設置といった取組が行われてきました。これらの取組と連携し、官民一体となって「流域全体での生態系保全」と「健全な水循環の再生」を目標として魚道の改修が進められ、平成26年度に完了しています。また、完成後もアユの放流に伴う地域住民との清掃活動、子供たちを交えた魚類調査の報告会が行われています。

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       【下北県民局からの事業説明】


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    【寒い中でしたが真剣に耳を傾けます】


現地では、大畑頭首工に設置された魚道を見学しました。大畑頭首工は改修前「頭首工より前に突出」している2m幅のアイスハーバー型と言われる魚道でしたが、魚は遡上の際、水の流れに逆らって、水流の激しい所を目指して進む習性があるため、水しぶきがあがると魚道の上り口を見つけにくいという障害がありました。

そこで、本事業では泳ぐ力が弱い、小さな魚でも迷う事なく遡上できるよう、「川の左側~中央~右側のどこからでも遡上できる全断面の魚道を新設しました。なお、全断面魚道は川の水が少ないときに魚道内の水位が低下すると、大型魚類が遡上できなくなります。そのための代替えとして、既存のアイスハーバー型魚道の勾配を緩やかにし、延長を38.0mから31.5mに改修して大型魚類の遡上に配慮しました。これにより、小型魚類から大型魚類まで幅広く、季節による川の流量の大小を問わず、遡上可能となりました。

この整備に当たり、大畑川地区環境公共推進協議会では、平成23年に大学教授などの専門家を含めた「大畑川魚道検討委員会」を設立しました。委員会では魚類の遡上調査を実施し、その結果を基に魚道の形式や維持管理方法を検討して、上記のような改修内容となりました。

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【奥側の幅31.45mの全断面魚道は「新設」】
【手前側に突出の幅2.0mのアイスハーバー型魚道は「改修」】

完成後には効果を検証するために再度、魚類調査が実施されています。
小型魚類を始め大型魚のサケの遡上も確認されており、改修、新設された魚道が有効に機能していると考えられるそうです。
本事業によって水産資源の回復、生態系の保全に繋がっていくことでしょう。 

今回の研修では、大畑川地区の先進的な環境公共の取組や、その取組による地元の合意形成と学識経験者の意見を踏まえて整備された魚道について学んできました。今後、各地域の環境公共推進協議会で活動していく上で非常に参考になりました。

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  【全断面魚道は川の左右中央部で遡上可能】

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    【新設の全断面魚道をバックに記念撮影】

研修に参加されたみなさん、お疲れ様でした。

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