多面的機能支払交付金の活動

 今回は、南部町で多面的機能支払交付金を活用している上名久井地区環境保全隊について、ご紹介します。

 上名久井地区環境保全隊は、南部町中央部に広がる田園地帯を拠点に、水田61ha、畑27ha、計88haの範囲で活動しています。平成24年から活動に取り組んでおり今年で11年目を迎えました。

 

 保全隊を立ち上げることになったきっかけとしては、今後農地を守っていくためには個々の農家だけではなく、より地域で一体となった共同活動による農地の管理が必要だという声があがってきたことです。

活動内容は、農用地周辺の草刈りや泥上げ等の農地維持活動のほか、植栽活動にも力を入れて取り組んでいます。

 

【水路の草刈り作業の様子】

【水路の泥上げ作業の様子】

 植栽活動には、農業者のほか地域にある4つの町内会や老人会、子ども会が活動に参加しており、地域一体となった景観づくりを行っています。

 参加している各町内会等の組織間では、多面的支払の活動に取り組む以前から、地域の伝統芸能である「えんぶり」や「神楽」の継承活動を通じて長年に渡り地域のコミュニティを築いてきました。多面的支払の活動を始めるにあたり、これまで培ってきた「地域のまとまり」をうまく活用できると考え、活動に参加することになったとのことでした。

 

 保全隊の活動を通じての成果を2つ紹介します。まず、水路管理の面です。人力作業だけでは賄いきれない箇所に交付金を活用したバックホーによる土砂の撤去作業ができ、非常に助かっているとのことでした。農道管理の面では、共同活動により定期的に砂利敷きや周辺の草刈りが行われているため、適切に管理できていることを実感しているそうです。

 

 保全隊での活動を始めて10年以上が経過し、現在の役員の多くが75歳以上と高齢化が進んでいる状況です。引き続き、地域の農地を守っていくためにも、次世代を担う若い人に積極的に引き継いでいきたいとのことです。

 今後の活動については、地域農業の活性化や南部町の発展のために、引き続き地域全体で支え合いながら活動を続けていきたいとのことでした。

【地域の方々が協力し合い行った植栽活動】

きれいな花壇の完成に、子どもたちも嬉しそう!

『歴史と伝説の里「鬼沢の会」』が『東北農政局「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」奨励賞』を受賞しました

 先に御紹介しました十三湖土地改良区と同じく、『歴史と伝説の里「鬼沢の会」』も令和5年度東北農政局「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」奨励賞を受賞しました!

 ディスカバー農山漁村(むら)の宝についての紹介は、先に御紹介した十三湖土地改良区の記事をご覧ください。

 

kankyokoukyo.hatenablog.com

 

<鬼沢の会の発足>

 『歴史と伝説の里「鬼沢の会」』岩木川土地改良区管内は、平成24年

に、弘前市の主要メンバーとNPO法人弘前大学の協力で「おにざわの未来を語る会」を結成しました。地域の史跡や伝説などの地域資源をまとめた「鬼沢まるごとMap」を作成しました。

 このことをきっかけに、平成25年度から、演劇などで地域外への喧伝や、農業体験ツアーを実施し、鬼楢(おになら)地域を地域外へも紹介する「歴史と伝統の郷「鬼沢の会」」の活動がスタートしました。

 

<具体的な活動>

①歴史と伝説の里「鬼沢の旅」の実施

 にんにくやりんごの収穫等の農作業体験や、後述の「義人 民次郎」スライドの上映を盛り込んだ、史跡や農業水利施設を巡る日帰りツアーを実施しています。令和5年度は地域外の団体からの依頼で、地域の史跡見学と「鬼沢の鬼伝説紙芝居「大人と弥十郎」の上演によるミニツアーとして開催しました。

【左:にんにく収穫】 【右:鬼神社の見学】

②「義人 民次郎」のスライドを上映

 地域の歴史を継承する取組として、百姓一揆の指導者を担った藤田民次郎の物語の紙芝居「義人 民次郎」のスライドを上映しています。近年は絵をカラー化し、物語を伝える弁士の育成にも力を入れ、青森市ほか県内のイベントでも上映しています。

【左:上映中の篠笛の演奏】 【右:スライド上映】

③「しめ縄奉納裸祭り」への協力

 地域の婦人会が、毎年旧正月鬼神社で行われる伝統行事「しめ縄奉納裸祭り」へ、観客に「けの汁」や、お餅、どら焼き等の提供を精力的に行っています。しめ縄奉納裸祭りは、令和2年度のあおもりの農山漁村フォトコンテスト人々の暮らし部門で最優秀賞を受賞した題材にもなっています。

【左:しめ縄の奉納】 【右:祭りの様子】

④鬼伝説バスツアーを実施

 地域に縁の深い「鬼」についての知識をより深めるため、津軽地域に複数ある「鬼と関わりが深い神社」や「鳥居に鬼が飾られている神社」を巡る「津軽の鬼伝説」バスツアーを実施しました。地域外の参加者とスタッフが共に学ぶツアーとなりました。

津軽の鬼伝説バスツアーの様子】

 以上の取組が評価され、この度東北農政局版奨励賞を受賞、となりました。誠におめでとうございます!

 また今後も、地域農業の啓発や地域資源の紹介を推進し、関係諸団体と連携しながら都市住民との交流を活発化し、300年以上伝承されてきた鬼伝説や民次郎ほか地域の伝統行事の継承に、積極的に協力していきます。

 令和6年度の活動については、現在事務局である「岩木川土地改良区」までお問い合わせ(電話:0172-82-3138 鳴海 様まで)、とのことです。

十三湖地域環境公共推進協議会が『東北農政局「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」奨励賞』を受賞しました!

 令和5年12月26日、中泊町十三湖土地改良区において、令和5年度東北農政局「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」奨励賞の授与式が行われ、川村文洋東北農政局農村振興部長から下山洋樹十三湖地域環境公共推進協議会長に賞状が授与されました。

【川村農村振興部長から下山協議会会長に授与】

 東北農政局では、「強い農林水産業」、「美しく活力のある農山漁村」の実現のため、農山漁村の有するポテンシャルを引き出すことにより地域の活性化、所得向上に取り組んでいる事例の中から、東北独自の特徴ある優れた取組を東北農政局「ディスカバー農山漁村の宝」奨励賞として選定し、広く発信することで他地域へ波及させていくこととしています。

 

 中泊町で活動する十三湖地域環境公共推進協議会は、平成22年6月から「高根地区環境公共推進協議会」として活動してきましたが、平成27年度の十三湖1期地区経営体育成基盤整備事業着手を機会に、十三湖地域全体の環境公共推進組織として改められることになりました。

【受賞記念撮影】

【賞状】

 本協議会は、地域の農業者や多面的機能支払交付金活動組織、関係自治会、地域住民、薄市小学校、十三湖土地改良区、小田川土地改良区、五所川原市中泊町、西北地域県民局地域農林水産部が会員となり、これまでに薄市小学校児童を対象とした「水辺の生き物調査探検隊」などの地域資源を将来に引き継ぐ活動等を行っています。

【令和5年度「水辺の生き物調査探検隊」】
【左:捕獲した魚の道程に挑戦!】【右:排水路の水質はどうかな?】

 賞状授与式では、川村農村振興部長から、この度の表彰は、「長期間活動を継続していることのほか、小学校と連携した活動が特に評価された」との講評がありました。

また、平成27年度に協議会活動の一環で頭首工やポンプ場などを巡った児童が、この経験をきっかけとして、令和5年度から県職員となって農業農村整備の技術者として活躍しています。

 

 協議会では、コロナ禍で自粛していた薄市小学校児童への「(虫送りの)虫つくり」指導の再開や地域資源を将来に引き継ぐための新たな活動を計画しており、より一層の地域活性化に向けて引き続き活動していくこととしています。

 

環境公共推進プロジェクト「大川原 未来へつなぐ 体験学習会 ~Part3~」

 令和3年度に国の指定棚田地域に県内で初めて指定された大川原地区で、令和5年11月26日に、本地区を学区とする東英小学校6年生と先生、保護者の皆さん34名による「牡丹そば」の食の体験学習会が開催されました。

 本取組は、学校教育と連携して大川原地区棚田地域振興協議会主催で開催されているもので、地元の小学生を対象として「農」や「食」の体験学習を通じ、棚田や文化に興味と誇りを持ってもらい、地域を担う次世代への「自然・景観・文化の保全・継承」に繋げていくことを目的として、令和4年度から開催されているものです。

 

 初回と第2回の様子はこちらから見ることができます↓

part1

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part2

 

kankyokoukyo.hatenablog.com

 

 今回の体験学習会は、種まき、収穫体験に引き続き開催され、協議会員で大川原地区のそば屋さん「お山の恵み」の店主である福士収蔵さんの指導のもと、そば打ち体験とそばの試食会が行われました。

左:開催場所の「お山の恵み」 右:福士さんの説明を真剣に聞く児童

 体験学習は、福士さんからそば打ちの説明を受け、以下の流れで行われました。

 ①ボールに適量のそば粉、小麦粉、水を入れて、手で混ぜ、練りながら、球状の「そば玉」にしていく。

 ②打ち台にそば玉を移し、手のひらで丸くつぶし、麺棒で伸ばす。

 ③伸ばしたそばを折り畳み、包丁で切る。

 ここまでの作業を、お父さん・お母さんにフォローしてもらいながら、生徒の皆さんは苦戦しながらも、そばの実が食べるそばになるまでの過程を学びながら、一所懸命に取り組んでいました。(そば打ちしたそばは、持帰用として皆さんに配られました。)

[練り作業] 力いっぱいこねました!

[完成したそば玉] 水分量ばっちりです!

[伸ばし作業] まるでそば屋のような手さばきでした!

[切り作業]手作り感あふれるそばの太さでした!

 そば打ち体験が終わり、待ちに待った試食会です。

 今回、みんなで食べたそばは、生徒の皆さんが作付け・収穫した牡丹そばを使用して事前に「お山の恵み」さんが準備してくれたもので、各自、温かいそば、冷たいそば(ざるそば)の食べたい方を選び、おいしくいただきました。

 

左:みんなで食べたざるそば(舞茸天ぷら付き) 右:試食会の様子

 今年度、3回にわたって開催された大川原地区での体験学習を通じて、地元小学生の皆さんは、棚田を「地域のお宝」として再認識することができたのではないでしょうか。

今年一年間、体験学習会お疲れさまでした!

 

環境公共推進プロジェクト「大川原 未来へつなぐ 体験学習会~Part2~」

 令和3年度に国の指定棚田地域に県内で初めて指定された大川原地区で、令和5年10月11日に本地域を学区とする東英小学校6年生8名による「牡丹そば」の収穫体験が開催されました。

 本取組は、令和4年度から大川原地区棚田地域振興協議会主体で開催されているもので、地域の小学生を対象とした「農」や「食」の体験学習の一環として、今年の7月18日に行われた種まき体験に引き続き行われたものです。

開花後の棚田のそばの風景(R5.9.4撮影) 手前が小学生が種まきしたそばの花

小学生が種まきした棚田のそばの状況(R5.10.11撮影)

肥料のやりすぎで少々育ちすぎましたが、そばはたくさん実りました

 

体験田近くの棚田のそばの状況(R5.10.11撮影)

こんな感じになる予定でした(;^_^ A)


 体験学習は、最初に棚田の勉強を行い、その後、協議会員の刈取り指導を経て、鎌を使った手刈りでの収穫体験とコンバインを使用した収穫作業の見学を行いました。

 手刈り作業を終了し、コンバインでの作業に移ろうとして生徒の皆さんに声がけしたところ、「もっと刈取りやりたい!」、「刈取り時間の延長!」との多数の要望が上がり、刈取り時間を延長するなど、みんな熱意をもって一所懸命、収穫作業に取り組んでいました。

左:協議会員による刈取指導 中:そばの刈取作業 右:コンバインの刈取作業見学

 今回の体験学習を通じて、地域の小学生が大川原地区の棚田や文化に興味と誇りを持ち、ゆくゆくは地域を担う次世代への「自然・景観・文化の保全・継承」に繋がっていければと思います。(次回体験学習会は11月下旬、収穫したそばの試食会(食の体験学習)を予定しています!)

 

東英小学校の皆さん、お疲れさまでした。