軟弱地盤対策の新技術 D-BOX工法

 青森県では今年度、南部町の地引地区で水田約35ヘクタールのほ場整備工事を行っています。
 水田を30アール区画に整形するとともに、耕作用道路、用水路、排水路を整備して、平成25年春の作付けに向けて工事を進めています。
 
 地引地区の水田は元々軟弱で水路が浅いうえに地下水位が高く、排水不良を起こしていましたが、今回の水路工事で、ヒューム管を深く設置する区間を実際に掘削したところ、想定以上に地盤が軟らかく、しかも水が湧き出すような状況でした。
 地盤の状況を確認するため、試験的に設置したヒューム管が翌日には約10cmも沈下していました。
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 改めて、基礎地盤を調査したところ、ヒューム管の基礎となる地盤の下には、泥炭土層が厚さ3m以上もあることがわかり、その対策工法についての検討が必要になりました。
 当初は、施工実績のある「梯子土台」、梯子土台に木杭を絡ませた「鳥居形梯子土台」、砂による置き換え、セメント固化、発泡スチロ-ル土木工法などが想定されましたが、供用後の沈下への不安や経済性等の問題から、総合的に工法を検討した結果、今回紹介する、改良型土のうによる「D-BOX工法」が浮上してきました。
 
 「D-BOX工法」とは、軟弱地盤対策用に開発された土のうを基礎の土台として活用する工法で、昨年11月にテレビ番組「夢の扉」で、「魔法の土のう」として紹介されました。「D-BOX」とは、区画分割された箱状の単位(Divided Box)を意味し、土を拘束することで強度が増大する原理を最大限に生かすよう工夫された箱状の袋です。
 
 こちらが「D-BOX工法」の土のうです。
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 詳しい原理は、開発者である『メトリ-技術研究所長 野本太』氏らの文献などを見ていただくこととして、今回は、実際の施工状況を紹介します。
 
 地引地区では、土のうをヒューム管基礎部に設置することとし、袋サイズ150cm×150cm×高さ45cmの製品に中詰め材として、コンクリート廃材などを利用した「再生砕石」を使用しました。
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 設置の手順は、次のとおりです。
 ①定形サイズの型枠に土のう(D-BOX)を設置し、再生砕石を投入します。
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 ②付属のマジックテープで固定し、製作は完了です。設置現場へ搬出します。
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 ③土のうを設置場所へ配置し、転圧機械で締め固めます。
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 ④砕石で高さを調整し、ヒューム管を設置して完了です。
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 「D-BOX工法」施工後に大きな沈下がなく、順調に工事が進みました。
 
 今回の施工に当たっては、始めに開発者である野本氏の指導を受けましたが、特別な重機や特段の技術力の必要がなく、土のう(D-BOX)に中詰め材を詰めるだけで容易に施工可能であり、従来の他の工法と比較し、施工期間を短縮することができました。
 
 また、今回は中詰め材に再生砕石を使用しましたが、土質条件が合えば、現場の発生土も使用可能とのことであり、現場から発生する建設発生土を抑制することが出来るほか、土のう袋はポリプロピレン製で破れにくく、中詰め材料を出し入れすることも可能で、転用も容易に出来ます。
 
 一度詰めた中詰め材料を戻している様子です。
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 「D-BOX工法」は、中詰め材料に現地の発生土などの自然素材を利用することができ、土質や水質に影響のあるセメント系固化剤を一切使用していないため、有害物質を発生させることもなく、また、土中の地下水変動への影響も最小限に抑えることができることから、自然環境に配慮した工法であると言えます。
 
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